「月刊水墨画」2012年5月号作家通信 掲載

 


中国画と日本画を原点に表現を広げて

                                             

                                    画家 文画   

 幼いころ、中国画家である父に手を添えてもらいながら、初めて描いた水墨画。小さな手に握りしめた筆が和紙に触れて、墨の濃淡が広がっていく――その気持ちよさに魅かれて絵を描くのが好きになり、私が画家を志すきっかけになりました。

後に日本で暮らすようになり、大学では日本画を専攻しました。岩絵の具の色彩の豊富さや表現技法の多様さに驚き、胸を躍らせました。また、日本画の原点は中国にありながら、現代の中国画と日本画の表現は大きく異なることも知りました。

 今でも展覧会に出かける度、日本画の繊細な質感や、重厚感に引き込まれ、静かな時間を享受でき、一方中国画では水墨の美しい滲みや余白、力強い線に心打たれ、パワーをもらうことが多くあります。中でも私が特に好きなのは、墨・色彩・和紙が作り出す柔らかくみずみずしい雰囲気です。豊かな滲みと色彩の重なりがのびのびと紙の繊維につたわって心に沁みこむような感覚は、最高の癒しのひとつだと思っています。私は花々や動物を描くことが多いですが、水墨・岩絵の具・和紙の特性を生かして、心和むような静かでやさしい空間を表現したいです。

 近年、日本と中国で活動して感じることは、表現の仕方などはそれぞれの特徴があっても、文化交流がより盛んになっている今、美への共感もより浸透していることです。両国の文化や絵画に影響を受けてきた経験が私の絵に表れていくように、私の絵が日中友好の懸け橋になっていくことを願いながら、今後も自分自身の成長とともに枠に捕らわれない表現を目指していきたいです。


文画 「ひとやすみ」2012年制作 墨、麻紙
「ひとやすみ」2012年制作 墨、麻紙